香りあそび【競馬香】


「競馬」という行事をご存じですか?――と言っても「けいば」じゃありません。

「くらべうま」です。
毎年5月5日、京都の上賀茂神社で行われる由緒ある神事で、
私たちがよく知るスピードを競う競馬とは少し趣が異なります。
現代人はつい「昔の衣装で馬術を披露するイベントかな」と思いがちですが、
じつはこの行事、1000年前の日本ではもっとのんびりとしたものでした。


当時は「合わせもの」と呼ばれる遊びや行事が盛んで、たとえば歌を詠み合う
「歌合せ」、香を調合して香りを品評する「薫物合わせ」などありました。
上賀茂神社の競馬もそうした「合わせもの」の一つとして行われていたのです。


競馬も「根合わせ」といって、菖蒲の根っこの長さを競うという、
なんとも牧歌的な催しが行われたあと、ようやく、二頭の馬が曳き出されるというなんだか
のんびりした空気をまといます。


さて、ここまで「競馬」について語ってきましたが、
江戸時代の前期から中期にかけて、上流階級の間で楽しまれていた
「競馬香(けいばこう)」という香りの遊びについて今日はお話したかった!(笑)


香道は、香りのあてっこあそびの一面があり、
なかでも「競馬香」などは「盤物(ばんもの)」と呼ばれる特別な道具を使います。


盤物はまるですごろくのようなゲーム盤で、一つで四種類ほどの香遊びができる優れもの。
たとえば、赤白の陣地争いをする「源平香」や、桜と紅葉の咲き具合を競う
「名所香」なども同じ「盤物」で遊べるようになっています。


競馬香では、参加者は左右に分かれてチームを組み、香炉が回ってきたら香りを聞き、
その香りを当てます。当たったチームの馬が盤上でマスを進められるというルール。
とはいえ、香りを当てるのはとても難しく、20マス進むのに2る時間かかることもあるんです。
これが、なんとも優雅でのんびり。「けいば」のようにスピードを競うわけではなく、
「くらべうま」の名のとおり、春ののどかな馬曳き行事を模した遊びですね。


香道は香りを当てる遊びでもありますが、ただの正解・不正解に一喜一憂するものではありません。


1000年前の空気感や香りと自分の心を遊ばせるのが香道です。
そしてそこに競馬(くらべうま)というツールがある。(からもっと面白い)


そんな香りの競馬、ぜひ機会があれば、また博物館などで展示があったら想像してみてくださいね。

投稿者プロフィール

KubotaHiro
KubotaHiro香人
香道を探求する香人。
小学生の時に読んだライトノベルの2ページで興味を持って無理やり入門。
香道ありきで大学に進学し、学芸員に。
香りと古典文学、アートを繋げる活動をしています。
パラレルキャリア専門エール通信

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