香りあそび【土用と香り】


「土用」と聞いて思い浮かべるのは、やっぱり「うなぎ!」でしょうか。
けれど実は、「土用」は夏だけではなく、春・秋・冬にもあります。

土用は、陰陽五行思想に由来する暦の概念で、四季の移ろいの「間」にある時期を指します。
なかでも有名なのが「夏の土用」。

1年で最も暑く、体調を崩しやすいこの時期、人々は昔から養生の知恵を大切にしてきました。

江戸時代の人びとは、暑気払いにところてんや梅干し、薬草茶を取り入れ、
風鈴の音、水打ちなど五感を使って涼を感じていたようです。


五感、香りはどうだろうか、というと空気や気持ちの湿気をぬぐい、
清涼感をもたらすものとして重宝されました。
香道では、この時期に「白檀」や「佐曽羅(さそら)」といった香木がよく使われます。
白檀は、インドなどに自生する甘く清らかな香木で、仏教とともに伝来。
お寺や仏壇の香りとしてもなじみ深いものです。


一方「佐曽羅」は、香道における香木の分類名で、流派によっては白檀を指す場合もあれば、
まったく異なる沈香の銘とされることもあります。
香りの世界には、はっきりした「正解」がない——
その香木をたいてみて、「これは佐曽羅ですね」「そうですね」ということで
「佐曽羅」と決まる、という、たいへんあいまい、というかなんというかふわっとしています。
ただ、その曖昧さもまた、香道の魅力なんですよね。答えのない芸術。


さて、「土用の丑の日にうなぎ」という習慣にもついでだから一言添えておきましょう。
有名な「平賀源内が販促で考えた説」は、実は明治以降に広まった後付けの伝説。
実際はそれ以前から、夏にうなぎを食べる文化はありました。


「土用=うなぎ」は定番ですが、本来は“心身を整える時期”としての土用。
香りを通じて、ひとときの涼を楽しむ——
そんな過ごし方も、現代に心地よく響くのではないでしょうか。

投稿者プロフィール

KubotaHiro
KubotaHiro香人
香道を探求する香人。
小学生の時に読んだライトノベルの2ページで興味を持って無理やり入門。
香道ありきで大学に進学し、学芸員に。
香りと古典文学、アートを繋げる活動をしています。
パラレルキャリア専門エール通信

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