今まであまり興味を持っていなかった宝石について、ちょっと調べる機会がありまして。
調べてみたら深くて面白いもので、私の好きな歴史なんかとも深くかかわりを持っていて、
改めて宝石というのは人の心を動かし続けていたんだなと思いました。
日本列島は、約六億年前にできた地殻(マントルと地表のあいだの部分)に存在しておりまして、
宝石が出来づらい土地らしいです。
それでも有機物、無機物を含めて10種類くらい産出しているようなので、
お好きな方はぜひ調べてみてください。
ちなみに香道では香木、という香りの発生する木を使いますが、
気候、その地域に生きる生物の影響で長い年月をかけて生成されるので、
日本では香木は生産できないんですよー!
それはさておき、古典のなかで人の心を動かしてきた宝石のひとつが真珠です。
そんな真珠のお話をご紹介したいと思います。
むかしの人々も、真珠の美しさに心を奪われていました。
真珠は誰もが手にできるものではなくとも、誰もがその存在を知っていたもの。
朝の草葉にほんの一瞬、太陽の光を受けてキラリと輝く白露は、
まるで小さな真珠みたい、と長く真珠にたとえられてきました。
万葉集の時代から「白玉」は真珠であって、草葉に光る白露でもありました。
白玉は真珠のように美しく、そしてはかなく消えていくもの、
恋する人や大切な存在のたとえとして詠まれています。
白玉は人に知らえず知らずともよし
知らずとも我し知れらば知らずともよし
(巻八・1018)
海の底にひっそりと眠る真珠のように、
誰にもしられていなくとも自分の心が知っていればよい、と。
ちなみにこの歌はお坊さんが自分の価値を知ってもらえない!というアピールの歌。
ははは。
白玉が詠まれた場面はもう少し時代が下った平安時代、
「むかしおとこ」が活躍する『伊勢物語』にもみられます。
6段、「芥川」にて、男が結婚が決まった女を家から連れ出して駆け落ちするんですが、
その途中で女が白露を見て白玉かと問うた、という場面があります。
その時の歌がこちら
しらたまか なにぞとひとの とひしとき
つゆとこたへて きえなましものを
(あれは真珠ですか?と聞かれたときに露と答えてあげればよかった、
そして、その時露のように消えてしまいたかった)
女が世間知らずなお姫様すぎて、先を急いだばかりに答えてあげなかったけど、
あの時答えて、そして消えてしまいたかった、という歌です。切ない。
史実的にはその時の姫は二条の后と呼ばれており、歴史的にいろいろ大活躍しますが、
それはまた別の話…

夏目漱石の『夢十夜』第一夜にも、そんな真珠のような物語がある。
百年待ってほしいと告げた女性と、彼女を待ち続けた男。
百年後、美しい花となって現れた彼女の姿は、幻想的で、どこか哀しく、そして美しい。
真珠のように、静かに心に残る物語ですね。
そして、香道もまた、そうした「かそけき美しさ」を味わう芸道。
香りを「聞く」とは、ただ嗅ぐのではなく、香りの奥にある物語や気配を感じ取ること。
香木が長い年月を経て熟成されるように、香りの一炷には、
目に見えない時間と記憶が宿っているんですよ~。
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