正倉院の香り


こんにちは。ライフスタイル部門・香あそびを担当するKubota Hiroです。
よろしくお願いします。


毎年11月には奈良の国立博物館で正倉院展が開催されています。
今年の開催は第76回正倉院展は11月11日まででした。

奈良時代のころ省庁や大きな寺院には重要物品を納める「正倉」と呼ばれる倉がありました。
正倉が何棟か集まっている場所が正倉院。
各地にあった「正倉院」ですが、今まで残っているのは
東大寺にある「正倉院」一棟だけ、ということなんですね。

ほかの所のも残しておいてくれたらよかったのにね。

さて、正倉院の宝物は何が入っているのかといいますと、大きく分けてみっつ。
①光明皇后が納めた聖武天皇の遺品。
②東大寺の重要な法要で使用した仏具。そして、
③東大寺内のほかの正倉にあった什器類が移されたもの


さて、今回は正倉院の香りについてお話します。

蘭奢待という香木はご存じですか?香りの歴史の中でもっとも有名な香木です。
その名前の由来として「蘭奢待」の各字に「東大寺」と入っていることなどが
現在でもよく知られています。


蘭奢待は全体で1.3メートルの巨大香木で、一番有名なエピソードは信長がごり押しして切った話。
はてさて、信長は事実横暴だったのかどうなのでしょうか。


一般的に蘭奢待、という名前が知られるようになったのは香道が盛んになった室町時代です。
むしろ蘭奢待の存在によって正倉院の名前が知られていた、といってもいいほど。
なんと江戸時代には蘭奢待を納める箱も幕府から寄進されています。
とはいえその来歴なんかはじつは定かではありません。
現在発行されている多くの香道、香木、香り関係の本でほぼ必ず蘭奢待については
記載されていますが、その内容も本によってまちまちです。


展示される際はケースに入っているので香りはわかりませんが、
木の表面にも樹脂がついている様子が分かりますから、
少しは香っているのではないかなと思います。(樹脂はすこしづつ揮発します)

今回はほかに正倉院に納められている有名な香木をご紹介します。
まずは、沈水香(樹液が木質に深く沈着していてるため水に沈む、の意)。
この香木は最初に淡路島に漂着したものであり、聖徳太子がその香木で仏像を作った時の
残りである、と言われているものです。


そして、白檀香。この香木にはいろいろな刻印が残っておりまして、
それがササン朝ペルシャのものやソグト文字のものだということ。
当時の交易を知る資料にもなっています。(交易に関わった人名などが書かれています)

香木は語りませんから、蘭奢待に限らずこういった来歴や伝説のすべてが正しいと
いうことはありません。

けれどまずはここまで残した先人たちに感謝して、出来ればいつか香りを聞いてみたいものですね!

投稿者プロフィール

KubotaHiro
KubotaHiro香人
香道を探求する香人。
小学生の時に読んだライトノベルの2ページで興味を持って無理やり入門。
香道ありきで大学に進学し、学芸員に。
香りと古典文学、アートを繋げる活動をしています。
パラレルキャリア専門エール通信

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