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  2. 企業から起業-経済産業省[奥山恵太]
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─ April 2020

経済産業省 経済産業政策局 産業創造課 課長補佐 奥山恵太さんに、パラレルキャリアに関する取り組みで、企業に所属しながらパラレルキャリアでキャリアを築くという興味深い内容をお聞きしてきました。

経産省は、新規事業の数の増加を目的として、大企業社員が辞職せずに自ら起業したスタートアップに出向して経営する「出向起業」を、支援する取り組みを始めます。対象者は、自分で実行したい新規事業案を持っている若手、中堅の社員になります。
多くの大企業の社員は、新規事業案を会社に提案しても、企業内の基幹事業とのシナジーが薄いと判断されたり、売上高推定規模が会社が求める規模を満たさない、事業リスクが高い等の理由で予算がつかずに、悶々としていることがあると聞いています。
このような社員の方々が、辞職を経た起業に踏み切れない事情がある際に辞職はせず、VC(ベンチャーキャピタル)からの資金調達や個人資産の投下によって自ら起業し、起業したスタートアップに自ら出向して経営する、という選択肢をご用意するため、経産省は、補助金を交付してこれを促進します。
一次公募は4月開始で6月中旬締め切りですが、9月に二次公募を予定しており、計50社程度のスタートアップ設立を目指しています。

子会社や関連会社の設立ではなく大企業とは独立した形での新規事業開発を促すという目的があるため、補助金の対象となるスタートアップには資本政策に制約を設けています。具体的には、補助対象は、応募スタートアップの顕在株の出向元大企業保有率が20%未満である場合に限られます。結果、80%以上の資本は、出向者の個人資産の投下やVCからの資金調達を以て賄う必要があります。

一次公募の6月中旬締め切りまでに法人を設立する程まで事業案が固まっていない社員の方々には、大企業社員をフルタイム出向で受け入れて起業までのプロセスをサポートする起業準備アクセラレータも、紹介可能です。このようなアクセラレータへの委託事業の実施も、経産省において検討しています。
現在、大企業から出向起業に挑戦する社員を出向・長期派遣研修等の扱いで拠出いただくべく、数々の大企業にお声がけしています。
大企業にとってのメリットは、第一に、人材育成です。独立したスタートアップのCEOを2〜3年務めて帰ってくることで、研修では身に付け難い経営経験を積むことができます。

第二に、将来的なM&Aを通じて、大企業の新規事業創出を促進できるというメリットもあります。大企業の社内事業としては投資しにくいハイリスクハイリターンの事業案を、いったん外に出して試し、成功した場合だけ好条件で買収することが可能となります。
また、第三に、新卒学生へのイメージアップというメリットが、大企業に生じると考えます。大企業社員のキャリアパスの一つとして、独立したスタートアップで新規事業に挑戦できるというパスが用意されているという事実は、優秀な学生を惹きつける材料になると考えられます。

加えて、第四に、社内新規事業プログラムや副業・兼業推進プログラムを設けている大企業にとっては、これらの出口として出向起業を位置付けることによって、新規事業や副業・兼業に取り組む社員のモチベーション向上につなげることができます。現に、副業として進めていたプロジェクトにフルタイムで取り組みたいので今次の出向起業補助金に応募したいという相談が、大企業社員から寄せられています。

出向起業の数年後は、大企業が社内事業として買い戻し、社内ベンチャー企業として事業継続するパターンを想定しています。また、現状のスタートアップ成功率から考えると継続困難になるケースも少なくありませんが、その場合は、大企業に引き戻された人材が実体験した修羅場経営経験自体が、大企業にとってのメリットとして残ります。最終的には、個人と企業側の話し合いになりますが、そのまま独立したスタートアップとしてスケールを目指すケースも生じると考えています。
女性が出向起業をしたケースは、まだ把握しておりません。経産省としては、出向起業される皆さんの多様性に注目していきたいと考えています。

補助金の審査基準は、事業の新規性、売上高がスケールしそうな事業性、出向の了解の有無、スタートアップが設立されている(または登記直前である)等の条件が満たされていれば、誰にでもチャンスがあります。このスキームが、日本的な起業モデルになり得るか、経産省としても挑戦する支援事業となっております。ご関心のある方々からのご応募をお待ちしております。

出向起業に係る補助金について

大企業には、自ら実行したい新事業案を持っているが、「本業とのシナジーが薄い」「推定売上高規模が積みあがらない」「不確実性が高い」という理由で、社内予算がつかず、悶々としている社員がいる。

当該社員が、辞職せずに外部VC(ベンチャーキャピタル)からの資金調達や個人資産の投下を経て起業し、起業したスタートアップに自ら出向して、新事業を開発することを、補助金交付により促進する。

2020年6月中旬に、一次公募締め切り。9月に二次公募予定。50社の出向起業スタートアップ創設を目指す。

※外部VC・出向者個人資産出資による持分が80%以上であり、人材出向元大企業の管理から離れていることを想定。人材出向元大企業が、知的財産の提供等の対価として、 スタートアップの株式の数%を保有することを想定。

<補助金の概要>

【公募時期】
2020年6月中旬に一次公募締め切り。(二次公募は9月頃予定)

【補助率等】
補助対象経費の1/2、上限200〜500万円

【補助経費】
試作・PoC等に係る外注費・委託費・材料費等(出向者の人件費は所属大企業負担)

【要件】
大企業人材が所属大企業を辞職せずに自ら起業し出 向するスタートアップ
当該スタートアップの株式のうち、当該出向者の出向元大企業の保有率が20%未満、等

パラレルキャリア専門エール通信