香りあそび【「聖なる木」パロサントと、香道】

最近、パロサントが人気ですね。
スペイン語で「Palo(木)Santo(聖なる)」と訳されるこの香木は、
南米に自生するカンラン科の植物。ペルーやエクアドルなどに生息し、
甘くスモーキーな香りが特徴です。



パロサントは雌雄別株で、メスは40〜50年、オスは200年も生きると言われています。
イチョウとかオリーブ、キンモクセイと一緒だ。
歴史としてははインカ帝国にまで遡り、儀式や神聖な場で焚かれてきました。
邪気を祓い、心身を浄化する香りとして、
先住民たちは外傷や呼吸器の治療にも用いていたそうです。


けれど今、この聖なる木は絶滅の危機に瀕しています。


パロサントは、自然の中で完全に枯れた後でしか新しい命を育めないと
いう特性があるそうで、倒木してから4〜5年、地に眠る時間を経て
初めて採取されるのが本来の姿だそう。

しかし近年は(例によって例のごとく)人気によって伐採が急増し、
自然のリズムを無視した採取が横行しているそう。
ペルーでは政府が認証制度を設け、倒木した木のみ採取可能とする厳しいルールが敷かれました。


香木と一緒だな。
香木も自然の中で完全に枯れて、地面で熟成されたのちに香木に成る。
だからかつては森の民がその管理(この木は孫の代になったら売りに行く、
それまでは地面に籠めておく。など)をしていたが、
そもそもの定住化政策により、森の民はいなくなり、
森から生まれるこの宝を見つけることができなくなりました。
(今は3代あとまで熟成なんてしないだろうし)


気候変動や自然破壊でそもそも森がなくなる、
ということも失われていく重要な要素でもあるのだが。
人の手では作り出せない、自然と時間の共同作業によって生まれる香りであるが
東も西も同じような感じで香木は危機に瀕していた、香木とパロサント。


産地も文化も異なるけれど、どちらも「神々しいもの」として扱われ、
儀式や精神性の場で最初にたかれてきた歴史があります。

香道では「六国五味」という分類があって、基本的にはそれ以外は使われません。
香道はサロン文化の側面が強く、伽羅であれば「伽羅の香りはこれ」という前提の
共有がなされている文化だったためです。


江戸時代には多分日本に輸入されることがなかったパロサントはその分類には含まれず、
香道の場では「異質」とされるかもしれません。


でも、きっと江戸時代にパロサントが来ていたとしたら、
きっと江戸風流人たちは使っていたと思うんだよな。


癒しとは、ただ心地よい香りに包まれることではなく、その香りがどこから来たのか、
誰の手を経てここにあるのかを知ることでもある。


パロサントの「香り」たいてみたらどうなんだろう。試してみようっと。


投稿者プロフィール

KubotaHiro
KubotaHiro香人
香道を探求する香人。
小学生の時に読んだライトノベルの2ページで興味を持って無理やり入門。
香道ありきで大学に進学し、学芸員に。
香りと古典文学、アートを繋げる活動をしています。
パラレルキャリア専門エール通信

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