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  2. テレワークとパラレルキャリアの可能性-総務省[FILE06]
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─ August 2020

霞ケ関でオフィス改革、働き方改革、人材育成を進めるテレワークの第一人者で、総務省大臣官房サイバーセキュリティ・情報化審議官の箕浦さんに、日本の働き方を変えるテレワークについてお話を伺ってきました。新型コロナ感染拡大前のインタビューですが、まさに、withコロナ時代に取り組む必要があるテーマになります。

パラレルキャリアは大賛成ですが、なかなか難しいところもあります。働き方改革と同じで「働く人にメリットがある」というアプローチは、企業経営者に響きません(苦笑)。経営上のメリットを訴えることが必要です。パラレルキャリアで活躍の場を広げている人は、必ずと言っていいほど、本業でも高い成果を生み出すと思います。その理由は、会社の肩書を背負わず広げた独自の生きた人脈を持っているからです。パラレルワーカーの人脈は、彼(彼女)だからこそ胸襟開いて話を聞くよ、といういきた人間関係ができています。何かの時にビジネスライクではなく、人間として話ができる関係が構築できているんです。パラレルキャリアの人達は、この人脈を所属企業のプロジェクトにも活用することができます。このメリットは本当に計り知れないと思いますし、企業側も、もっと評価することが必要です。

また、会社も役所も、あらゆるところに言えますが、肩書きに依存して仕事をした場合、その肩書きによってできた人脈は、異動して肩書きが変わったら、多くの場合、役に立ちません。狭い組織の中だけで生きていく上では間に合うかもしれませんが、組織を離れた瞬間、役に立たなくなります。こういう人が世の中に出て、一人でビジネスができるかというと、おそらくできないでしょう。しかしもっと自分の軸足を持っていて、志事(志の仕事)がでいている人は、組織の中だけではなく、外でもビジネスで成功します。こういう人が、まさにこれから、国や組織、会社をどうやって変えていくか、という時に、今何が本当に問題なのか、生の問題、課題を自分で発見できる人です。机の上で理想的だろうなと適当に描いた絵で、予算だけもらって仕事した気になっているような人ではなく、パラレルキャリアを通じて世間の様々な分野の人たちとネットワークを構築している人が、社会で本当に必要で困っているところ、痒いところに手が届くような仕事や仕組みが作れるようになっていくと思います。どこの会社、組織でも、生産性が低い人がいますが、そのような社員を社内で懸命に教育訓練するだけで成長させられるのか?という話です。

一方で、今、民間企業で採用問題が深刻になってきています。新規一括採用もそのうち無くなるでしょう。実態としては、中途採用かインターン採用にシフトしていて、これからもっと加速します。少しでもいい人材をとっていきたい、というニーズはもちろんありますが、そうは言っても、従来の採用の考え方では、まかないきれないのが実情です。採用した人材をもっと外に出して、もっとアクティブに育てていくという側面と同時に、アクティブにパラレルキャリアを志向する人を自社の社員じゃなくパラレルワーカーとして、活用していくという発想がないと、これからの日本の経済を支えていけないし、また、その方向に向かわざるを得ないと思います。人口減少の中で頭数だけでなく様々な専門分野の人材が不足する時代には尚更だと思います。

パラレルワークの今後で難しいのは、労働法制の基本概念が、まだ勤務時間中心主義である、という点です。この昭和スタイルのパラダイムを変えられるほど、清水の舞台を飛び越えられますか、というのが大きな壁です。

ところで、日本の国際競争力は、平成の30年間ずっと低迷したままです。かつて平成に入った頃、日本の国際競争力は諸外国、先進国の中でもダントツ首位でした。それが、平成4年を最後にガクンと落ちて、今はもう、ずっと20位〜30位の間を低迷している状態。では平成の時代、日本人がサボっていたかというと、ものすごく一生懸命仕事していたし、ICT革命でも日本のIT企業はずいぶん元気になったと言われています。それでもなんで国際競争力が低迷したままなのか?

それはやはり、テレワークをやっていないこと。ICT革命の恩恵をビジネススタイルの変革に結び付けられておらず、ビジネスの発想が昭和のまま変わっていない点に起因すると捉えています。一人ひとりのワークスタイルもそうだし企業、組織のビジネススタイルもそうですが、昭和の拠点主義から抜け出せていません。これだけICTが発展して、スマホ、タブレット、モバイル端末が1台あれば社員がいろんなところに出向いて行って、もっとアクティブに生産性を上げられる時代に、社員を会社のオフィスに閉じ込めているのが現状です。ワーカーも会社に通勤することで、給料をもらっているくらいの意識の人もいる。令和の時代を生き残りたいなら、テレワークぐらいでつまづいていたら、その先は厳しいです。そのくらいの覚悟でテレワークはやってほしいです。

高い業績を上げている企業や成果を生み出しているワーカーたちは、テレワークを当たり前のように活用しています。自治体も、これから先の日本での立ち位置を真剣に考えているところは、いろいろな新しいアイディアを考え、行動を起こしていて、地域密着型テレワークで活性化していこうという動きも芽生え始めています。ワーケーションとか、地域テレワーク、で検索すると、様々な自治体の動きがわかります。私の今後の目標は、地域密着型で動き始めている地域のテレワークを支援し、全国ネットワーク化するということです。昨年ついに全国の自治体の協議会が立ち上がりました。

これからの「働き方」を考える際のキーワードはいろいろありますが、テレワークで社員が目の前にいなくても大丈夫?ということを心配して先に進めない企業に対しては、社員を「心配」するのではなく「信頼」してください、と言いたいです。信頼することで、社員はもっと元気になる。パラレルキャリアも同じです。

(次回につづく)

パラレルキャリア専門エール通信