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  2. コロナで変わる働き方-総務省[FILE05]
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─ April 2020

霞ケ関でオフィス改革、働き方改革、人材育成を進めるテレワークの第一人者で、現総務省行政評価局総務課長(局総括課長)の箕浦さんに、日本の働き方を変えるテレワークについてお話を伺ってきました。今回は、新型コロナウィルスの影響についてです。

新型コロナの影響で、約8割の企業がテレワークをしているらしい、と聞いています。昨秋までの最新データでは、テレワーク導入予定企業まで含めても、たった25%しかいませんでした。残りの差分がどこから出てきたかというと、にわかにリモートワーク対応のシステム環境を作ったか、もしくは、リモート環境は整っていないが「自宅で仕事してください」と指示してしまった企業かもしれない、と考えています。もし後者だとすると、今回の騒動で著しく業績にも影響が出るのでは、という心配もあります。

リアルイベントは軒並み減少していますが、オンラインイベントは活発になりつつあります。この前、私自身もオンラインで登壇しましたが、そういう形でも臨場感なり一体感などが十分得られる、という実感は持てましたし、他の参加者達も同じように実感された方が多いと思います。コロナがおさまれば、実際集まってのイベントも良いですが、これからはオンライン参加のチャンネルがあるだけで、参加者の幅が広がると思います。

働き方は、これから更に変化すると思います。在宅かどうかは別として、今までだと物理的に会社の外でデスクワークはできませんでしたがリモートワーク開始により、移動中にできる環境が整ったわけですから生産性をあげたり、働きやすさを向上させたり、ということが感じられたと思います。特に、その環境を使われているワーカーさんにとっては、選択の幅が広がりますので、格段にやりやすいと思います。働く場所もかなり自由に選べるようになってくるので、だいぶ違ってくると思っています。

リモート環境では、非常に高いマネジメントスキルが求められます。それが原因で躊躇っていた人たちが、今回やってみて無意味な心理的抵抗感を乗り越えやすくなったのではと思います。新型コロナで激震が走って、良くも悪くも企業の見方がだいぶ変わってきたという気がしました。

このコロナ騒動で感じたのは、政府の対策も大事ですが、目に見えないものから身を守るのは、一人一人が自律的に考えて行動していくことが大事ということです。個人的には初動が全体的に遅かったような気がします。政府が、ということではありません。例えば満員電車は混雑解消が1ヶ月遅かったです。政府が発信するまで誰も行動しませんでした。何社か対応が早いところはありましたが、多くの企業が、言われるまで動かなかったし、言われてもまだ右往左往している、というのが現状のような気がします。

そこは改めて、皆さんも考えた方がいいのでは、と思います。将来もっと高い致死率で強い感染力のウィルスが日本に入ってくることも十分考えられます。その時、皆さんは、あの満員電車で通勤するんですか?政府が何も言わなければ、通勤し続けるんですか?そういうことだと思います。

情報の読み解き方と、そこから自分がどう行動したらいいか、どうすることで家族を守っていけるか、ということは、誰かに言われてやるのではなく、自分でも考えなければいけないと思います。それをできる人じゃないと、今回の感染症対策に限らず、自分の働き方を価値あるものに変えていけないような気がします。

私はこの局で、政府が要請するよりもずっと早くからアナウンスしてテレワークや時差出勤をスタートさせました。いつも、あらゆる場合に備えて対応しています。今後は、どうなるかわかりませんが、リモートに舵を切っていく企業などは、このピンチをチャンスに変えていくきっかけになったと思いますし、リモートに縁がないと思っていたビジネス分野でも、この機に考えざるを得ない状況になりました。もう少し大きな目で見ると、確実にチャンスを掴みかけていると思います。

一番典型的なのは、教育と医療です。教育も学校にいけなくなったことで、学業をどうやって提供する形があり得るか、と言う問題に直面していますし、医療も逆に、院内感染のリスクもあって病院にいきにくい、と言う場合に、これからの医療をどうしたらいいのか、と言うことです。本当は、ある程度の答えはあります。でも、今まで、ためらってそこに進まなかったところに、ちゃんと踏み込めるかどうかですね。例えばオンラインで診療して処方箋出すか、もしくはAIが処方箋出せる時代になるか、と言うところまで踏み込めば、相当私たちの暮らし方自体が暮らしやすい世の中になるかもしれません。

ICTが進化する中で、本当はできるはずだったリモート環境が整っていなかった。そのようなビフォーコロナの環境を、今回の危機で、変えていけるチャンスと言えます。今は難儀な時期がしばらく続きますが、アフターコロナに向けて、さまざまな分野でリモートワーク環境が整っていけば、と期待しています。

(次回につづく)

パラレルキャリア専門エール通信