1. Home
  2. #複業解禁 株式会社パルコ
SPECIALS

─ June 2021

パラキャリウーマンの安藤彩子さんが在籍する株式会社パルコ の執行役員 富澤 華央 さんに、社内のパラレルキャリアについて詳しくお話を伺いました。

資産は「人材」という考え方

パルコは、2019年2月から複業(パラレルキャリア)を解禁しました。弊社は商業ディベロッパーとして、SC事業と不動産事業のハイブリッド型ビジネスモデルを構築し、事業を展開しています。社員は約680人です。我々にとっての資産は、特別な商品や特許などではなく「人材」にあります。

資産である「人材」が成長し、もっと活躍するためには、社外での経験も必要になると考えました。社員が成長し、個人の可能性を広げていくことで、新しい提案や価値創造が起き、それらが将来的な会社の成長に繋がっていきます。そこで社外経験のひとつとして、複業という形を取り入れることになりました。

社外からの情報収集

複業を解禁するにあたり最初にしたことは、先駆者であるソフトバンクさんへ直接お話しを伺いに行きました。2018年に働き方改革による「モデル就業規則」が改正されたものの内容については手探り状態でのスタートでした。

弊社には、社内だけで十分な情報が得られないと判断したことに関しては、積極的に社外へ聞きに行く、という企業風土があります。複業解禁についても、仕組みづくりやノウハウをソフトバンクさんからお聞かせいただき、それらを参考にして制度化を進めた経緯があり、今に至ります。

複業制度について

複業は、基本的に弊社が定めたガイドラインに沿って始めてもらっています。要件に従って申請手続きを行い、承認基準を満たせば、複業開始になります。複業制度を活用できる対象者は、原則として社歴2年以上の正社員と契約社員です。また、残業時間が月30時間を超えた場合は、対象外になります。複業先との雇用契約は認めていません。あくまで自営業か請負業務のみになります。競合になる業種や同業他社など、本業に相反する内容も認めていません。就業時間内の複業行為も禁止になっています。

現在の制度利用者は、男女合わせて延べ20人弱で、男性の方が多い印象です。複業に取り組む期間も、短期から長期まで様々です。全員3ヶ月ごとに報告書を提出してもらい、複業の仕事内容や複業での成果も把握できるようにしています。

社員との信頼関係

複業解禁に伴い、情報流出を懸念されることがありますが、問題発生の可能性だけを考えるとキリがありませんし、複業解禁の有無に関係なく、どの企業でもリスクはあります。弊社では、複業を解禁する以前からリスク管理を徹底しています。複業を始める際は、当事者と弊社の間で誓約書を交わしていますが、それ以外のことは、何もしていません。社員と企業が、お互いの信頼関係の上に成り立った複業解禁になります。

リスクを恐れすぎると前に進めなくなってしまいます。まずはスタートしてみて、なにか問題が起きたら、その都度、迅速に対応していく、ということが大切だと考えています。今のところ問題はありません。

複業解禁による問題

残業が30時間を超えたら、原則として翌月から複業制度が利用できない、という決まりがありますが、このルールによって複業を禁止された社員は一人もいません。複業中の社員名や仕事内容は、公表していません。本人が公にしない限り、周囲で情報共有されることもありません。複業解禁により、本業への熱意や業務効率の低下につながるのでは?と心配する声もあるようですが、弊社では複業に関するガイドラインや、風通しの良い社内環境により、本業に悪影響が出ている、と考えられる事態は避けられています。

複業で変化したこと

2019年に複業を解禁したばかりなので、人数的にも実績としても、多くはありません。目に見える変化や、わかりやすい成果も、まだ明確には出ていませんが、残業時間のハードルがあることで、時間管理の意識が出てきたと感じています。

組み合わせの効果

弊社では、「グループ内複業」も始まっています。グループ会社の一つがコンペに参加する場合、1社のアイディアだけによる提案では、通りにくいことがあります。そこで、パルコ全グループの中から、その知見を持つ社員に加わってもらい、より専門的なノウハウや、違う視点からの企画を組み合わせたりします。

例えば、商業施設のデザインや環境演出などの提案に対してパルコのリーシング(商業用不動産の賃貸を支援する業務)や販促企画ノウハウを組み合わせるということができたりします。このようにグループ内で協力してコンペに参加した結果、コンペを勝ち取れた成果が出ています。弊社では、これを「グループ内複業」と呼んでいます。もちろん複業としての取り組みなので、その際には協力してもらった社員には、報酬も支払われています。

社員が活躍できる制度

私は、人事戦略部の担当として2年目になります。今は主に、多様な人材の自律性を尊重し会社と個人の成長を促す戦略促進型人事制度への改革を行っています。働き方の改革の一環で、以前から弊社にも在宅ワーク制度がありましたが、十分に活用しきれていませんでした。しかし、昨年から新型コロナ感染拡大の影響もあり、一気にリモートワーク化が進んでいます。昨年度は、いろいろな制度を導入しました。今年度も新しい制度導入に向けた準備を進めているところです。

制度は、きちんと使ってもらうことで初めて生きてくる、と思っています。その結果、活躍の幅を広げて魅力的な働き方を実践する社員がどんどん増えていくといいですよね。

複業解禁に興味がある企業に向けてエール

なにより社員を信頼することが大切だと考えています。また、信頼できる人を採用することも重要です。新卒採用の際、「複業はできますか?」と質問する学生さんも増えてきています。複業解禁は、企業にとっても優秀な人材を採用するための重要なポイントになりつつある、と実感しています。

複業解禁に踏み出す、ということは、企業にとっても非常に大きな決断です。検討を考えている企業様には「とにかく一歩、踏み出してみませんか?」と伝えたいです。案ずるより産むが易し、ですよ。

富澤 華央
株式会社パルコ 執行役員 人事戦略部担当

パラレルキャリア専門エール通信