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─ November 2019

パラキャリウーマンの亀井優子さんが在籍する、さくらインターネット株式会社の奥畑さんに、パラレルキャリアや副業の取り組みについてお話を伺いました。

社長からの提案で複業解禁

弊社は、2017年1月に副業、兼業、パラレルキャリア(複業)を解禁しました。元々そのような複業は禁止でしたが、社長が方針を出し、それに対して、当時の人事が複業に対する考え方を会議にあげて、さらに、以前から弊社にある「さぶりこ」という働きやすさを整える施策をいくつか打ち出している中で、副業、兼業、パラレルキャリア(複業)が題材に上がり、解禁を決めました。

解禁した理由は、外に出て刺激を得て欲しいし、願わくば外で得たものを社内に還元して良いサイクルを作って欲しい、ということ。もう一つが、会社にいながら起業にチャレンジできる(起業へのハードルを下げる)ということになります。社長は学生起業者でもあるため、起業に対する想いも強いようです。将来的に社員が起業することに対しても応援してくれています。

禁止するから認めるへ

副業、兼業、パラレルキャリア(複業)の仕組み作りや具体的な促進については、特に大きなことはしていません。変わったことは、就業規則を「禁止する」から「認める」に変えただけになります。

気を付けていることは、別の会社にも所属するとなった場合、税金の兼ね合いがあるので届け出を必ずしてもらうことです。それ以外は、特に会社への届け出も不要としています。管理をしないのが特徴かなと思います。

複業解禁後の問題点

複業解禁後、今のところ大きな問題はありません。ただ、個人でやる以上は、自由と責任がセットになっているので、確定申告も含め全て自己責任でやってもらっています。恐らく、いろんな人がいろんな頻度で、いろんなことやってるのでしょうけど、人事としては、それを管理していないので詳細は把握していません。

複業を始めたことで、本業の業務効率が低下することも多少はあるかもしれませんが、弊社の人事ポリシーとして、社員を信じる「性善説」があります。社員が複業をしても、ちゃんと本業はやってくれるであろう、ということを前提とているので、それをわざわざ問題にしていません。もし副業、兼業、パラレルキャリア(複業)によって、実際に本業でのアウトプットやパフォーマンスが落ちたとなれば、それなりの評価が本人にはね返えっていくので、その時は本人も納得せざるをえないと思います。

リスクはあるが社員を信じている

機密情報漏洩のリスクは、確かにあります。同業他社さんに行ってはいけない、というルールは作っていないので。でもやはり、信用ですね。会社の大切な情報を漏らす社員はいないと思って複業を認めていますし、社員を信じています。労働時間も本人に任せていますが、難しいところです。本業がさくらインターネットであり、プラスアルファでやるので、うまく有給を使うなり、弊社独自の「さぶりこ」制度を使ったり、勤務時間をスライドさせたりして、制度を組み合わせ工夫することで実現可能な環境になっています。

もしも、仕事が好き過ぎて寝ずに働いているという人がいても、本業の方でキャッチできると思っているので、そこでしかるべき対応をとる、という形になるかなと思います。

複業解禁して良かったこと

複業解禁して良かったことの一つは、本業のモチベーションにつながったことです。複業をやることによって新しい視点だったり、刺激だったり、それを本業で試してみたりとか、そういった部分があります。

もう一つは、本人が自分の価値を知ることができます。例えば、社内だと当たり前に通用していた常識が、社外に目を向けたときに常識じゃなかったことに気付いたり、逆に、他社と比べて自社でやってたことがすごく進んでいた場合、自信につながったりします。それがイコール勉強のきっかけになったり、もっと自分の能力を他で活かしてみよう、というきっかけになったり、本人の気づきにつながっています。

ユニークな制度

弊社は、有給休暇が入社した時点で20日間付与されます。労基法上、継続勤務年数が6年6ヶ月経つと有休付与日数が20日付与することになりますが、最初から付与したらいいのでは?ということと、作業軽減の面から決まりました。

この制度になる前は、有給付与の際、人事側で各社員の勤続年数を全部計算して、タイムカードに登録して、という作業が発生していましたが、そこを省くことで人事も社員も幸せになるため、しない理由がありませんでした。ちなみに有給休暇は1時間単位でも取得可能です。

もう一つユニークな制度で、有休を2日以上連続で取得することで、連続有給手当として1日5千円を支給しています。計画的に休むことで仕事もプライベートもどちらも大事にしましょう、という想いが根底にあります。

また連続有給休暇は、1週間以上前に申請するルールがあります。これは計画的に休める人が意外と少なかったからです。有給を使うのが体調不良で病院に行く時だけ、みたいな人もいて、本来の有給取得と違う、ということから、ちゃんと計画的に休めた人にはそこに手当を出してもいいのでは、という発想からになります。お金ももらえるので結構使っている社員は多いです。

実は、計画的に休むには計画的に仕事を組み立てないといけなくて、どちらもできないと休めないんです。出したメッセージの裏側には、こうなってもらいたい、という想いがあるのですが、その辺は制度を作るときに人事で見せ方をどうするか?会社の利益が両立しているか?そういうところを大事にしています。複業解禁以外にも、こういった制度が弊社では社員のパラレルキャリアを後押ししている可能性もあります。

複業解禁を検討している企業へエール

複業解禁は、企業からするとリスクがあると思いますが、それをどこで潰すか、です。例えば弊社の場合だと、人事ポリシーで「性善説」という軸があり、社員ファースト、社員のメリット優先なので、出てくるリスクは後で潰す合意をして複業解禁しました。

複業解禁できない企業は、情報が洩れるんじゃないか?とか、業務がおろそかになるんじゃないか?など、様々なリスクが頭を巡って、まだ解禁できないと思うんですけど、本当に解禁する気があって、社員や会社のためになると考えるなら、とりあえずやってみることです。何かあったら、その時に対処する、ということでいいんじゃないかなと思います。

奥畑 大介(おくはた だいすけ)
さくらインターネット株式会社 人事部 労務制度グループ

(取材・写真:今西 由季)

パラレルキャリア専門エール通信