香りあそび【菊の香り】

こんにちは。ライフスタイル部門・香あそびを担当するKubota Hiroです。
よろしくお願いします。

9月9日は重陽の節句、重陽と言えば菊ですね。今回はそんなお話です。

節句というのは中国の陰陽五行説によって奈良時代の頃伝わってきた考え方です。
陰陽五行によると、すべてのものには陰と陽がある。
数字だって陰もあれば陽もある。1,3,5,7,9は陽で2,4,6,8は陰。
つまり奇数は陽で偶数は陰です。
陽の月の陽の日(9日)は陽のなかでも陽である、ということなんですね。
なんかすごい。9月9日やばい。

なので「最大の陽と最大の陽が重なるから最大の陰になる」っていう
マイナスの掛け算みたいなやつ?っていう考えもあったりなかったり。

ちなみに香道でも香炉に箸目といって、香炉の中の押した灰の上に
火箸を押しつけてつくるすじ目があるんですが、
この箸目のつける向きにも月によって陰陽が分けられています。

陰陽、そしてその考え方から来た節句は、当初貴族や寺社だけで行われていた風習でしたが、
江戸時代幕府の庇護もあり全国に、庶民に広がりました。

とはいえ貴族は奈良時代から重陽の節句を祝っていました。
菊についてる朝露を集めて化粧水にしたり、菊を詰めた枕で寝たり、
菊を浮かべた酒を飲み、不老不死を願ったとか。

枕草子に重陽の前夜、菊の花の上にお布団を置いて香りと露を十分に染み込ませておきます。


すると翌朝菊の香りと朝露が染みこんでいて、長生きできそう!!いや尊い!
これは美人になれるかも?!と書いてあります。
(今の私たちだったら、え?そんなことしたら湿気ちゃう!!ってなりますけど、
今の布団とはだいぶ違うものだと思ってください・・・ええとキルト?みたいな
感じが近いと思ってください。)

ここで本題。なぜ菊は不老不死なのか、というと「菊慈童伝説」によるもの。
ざっくりいうとこんなお話。

むかし中国、周の時代のこと。王様に仕えていた慈童という少年が、
罪に問われ流刑にあいました。その地で観音経を菊の葉に写したところ、
そこに結ぶ露が不老不死の霊水となり、それを飲み続けたところ少年の姿のまま
千年も長生きしたのでした。このお話は仏教と一緒に日本へ渡ってきた説話です。

菊慈童は能の演目にもなっているのでご存じの方も多いかも。




ちなみに菊の香りは名だたる武将たちにも好まれていました。

今年の秋は香りも能く、解毒作用もあるという菊をぜひ楽しんでくださいね。

投稿者プロフィール

KubotaHiro
KubotaHiro香人
香道を探求する香人。
小学生の時に読んだライトノベルの2ページで興味を持って無理やり入門。
香道ありきで大学に進学し、学芸員に。
香りと古典文学、アートを繋げる活動をしています。
パラレルキャリア専門エール通信

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