株式会社 ディー・エヌ・エー

株式会社ディー・エヌ・エー 執行役員ヒューマンリソース本部の本部長 崔大宇(チェテウ)さんに、社員のパラレルキャリア応援について詳しくお話をお伺いしてきました。


 副業解禁は、2017年10月からになります。3年ほど前から、社員に対して毎月キャリアマネジメントアンケートを行っており、そこで「やりがいを持てていますか」「能力を十分に発揮できていますか」という2つの質問に対して毎月全社での推移を見ています。

 やりがいが常にあり、能力が発揮できている人は、全体の約6割ほどいますが、逆に4割の人はまだまだ十分に伸びしろがあるわけで、その人が持っている個性や熱意をより発揮することで、この会社がもっと強くなる、という考えをもとに、色んな人事施策を打ってきました。

 例えば、副業解禁の他には、人事を介さずに、異動先の上長と合意すれば、異動が出来る「シェイクハンズ制度」があります。

 当時は組織の破綻が起きるのではないか?という恐れもありましたが、本人が持っている熱量や想いを最大化させることが、会社全体でやりがいを最大化させることにつながるだろう、という考えでした。そういった施策の一つに、弊社では副業解禁があります。

 副業を実際にしている人は、会社全体の10パーセントほどで、男女ともに偏りがなく、半々くらいの認識です。件数としては150件以上になります。副業を解禁してから1年ちょっとで10パーセントですので、感覚としては伸びていると感じています。会社の承認申請は毎月続いているので、副業をされている方は増えていると思います。

 もちろん副業解禁を始める前には懸念がありました。本業に対しての生産性の低下、会社に対して結果として迷惑にならないか、労務観点では労働時間の管理が出来るのか、体調を崩さないかなどの懸念です。

 流れとしては、まず上長の承認、その上の事業のマネージャーの承認、さらに人事としても、その人の労働時間や副業の内容に関して、競業支援に当たらないかなど、人事が持っている基準と照らし合わせて承認しています。

 懸念事項も含めて、副業を解禁したのは、一番に「その人の熱量を最大化させる」ということを考えたからです。

 現場でもっとこういう能力を身につけたい、という本人のキャリアの意向や本業でよりパフォーマンスを発揮する相乗効果、別のキャリアも見据えたい、スキルも身につけたい、と願う本人の希望を考えた時に、その全てが弊社で用意できるものではないと考えています。

 「人を大事にする」という考え方に立つと、その人をしっかりキャリアサポートするような土壌を最低限作ってあげる、ということが会社の人に対する考え方なのではないかと思っています。

 人の成長を自社だけで囲うのではなく、他でも伸ばしてもらう、という考え方も、柔軟に持ってもいいのかなと思います。

 副業解禁の成果としては、まだ実際に解禁してから1年ちょっとなので、会社全体として顕著に表れていることはありません。

 ただし、副業をしている人のアンケート結果によりますと、「副業を本業に活かせているか」という質問には90パーセント近くが「活かせている」と回答しています。実は、上長にとったアンケートでも同様に、「本業に活かせている」という答えが90パーセント近く出ています。

 全体としてはまだ分かりませんが、現時点で現場レベルで見ると、「やりがい」が本業に活かせること、その人自身の「人生を豊かにしていける」こと、上司から見ても「本業に貢献している」ということから、副業解禁は、基本的にはポジティブな側面があるのではと考えています。

 会社としてのデメリットは、出ていないという認識です。アンケートでも今のところそういった声はありません。

 副業をするには、会社に申請し承認を受ける必要があります。上長、部長と確認をして、最終的には人事(副業事務局)が判断をします。その際に副業承認に対しての3原則があります。

 1つ目は、本業に支障が出ないこと。2つ目は、会社に迷惑をかけないこと。3つ目は健康時間管理を遵守すること。

 この3原則はしっかり見ています。

 副業承認をした人に対しては、開始前の事前説明研修があります。先ほどの3原則や禁止事項などの説明です。

 例えば、こういった形で発展すると競合支援にあたるので条件付きの承認ですよ、など、ルールに関しては個別にも細かく指導をしています。副業をしている方からの定期報告も義務づけています。

 副業の状況や、労働時間が変わったり、途中で終了した、など変化もありますので、この3原則を元に、定期的に申請し直したり、承認プロセスを全体に周知、徹底しています。

 女性の離職率については、全社員での女性比率が高い訳ではありませんが、産休、育休の復帰率は94パーセントとかなり高いです。時短での働き方や、その人に合った働き方、仕事内容を頻繁かつ柔軟に合わせることで、復帰後にまたDeNAで働かれる方が多いです。働く女性に優しい会社であり、環境が整っている会社なのだと思います。

 副業解禁を考えていても、踏み出せないこともあると思いますが、弊社の場合は、副業解禁を行うことは、自己実現を叶えてあげることで、人生の中の本業に対して、やりがいとして跳ね返ってくるモノだと信じています。

 その人が熱意を持って働ける状況を作るためには、自分のやりたいことに対して支援してあげることが結果的に会社として良い結果をもたらすと思います。人事策としては、なかなか施策自体を目的とするモノではないので、一概に副業をやることが良いとは言えません。

 ただ、その会社が目指す人に対する考えがあるのであれば、もしかしたら副業解禁という形が合っているのかもしれません。

 私たちの会社としては、副業解禁だけではなく、本人の希望でリソースの最大30%まで他部署の仕事を兼務することが出来る「クロスジョブ制度」など、そういった施策を複数走らせています。

 あくまでも根幹にあるのは「人の力を最大化すること」です。そのため、どの会社でも副業解禁をすれば良い、とも思いません。その会社の人に対しての考え方やカルチャーに合ったものがあれば、それが良いと思います。

株式会社ディー・エヌ・エー
執行役員 ヒューマンリソース本部
本部長
崔大宇(チェテウ)