ロート製薬株式会社

ロート製薬株式会社の蔵方さんに、パラレルキャリアや副業の取り組みについて詳しくお話をお聞きしてきました。


成長を応援するための副業解禁

 2016年3月から副業解禁としましたが、解禁自体が目的というわけではなく、社員の成長を後押しするために生まれた施策になります。

 「夜の時間に本を読み、様々なセミナーに参加する」「自分で自己研鑽的に成長するために、知識を蓄えたり経験をしたり資格を取得する」といった流れの中の一つとして、副業があってもよいのではないかという考えがありました。

 もちろん、弊社で人員を削減したいとか、他社へ転職をして欲しいという理由ではありませんし、社員が給与を更に稼ぎたいという理由でもありません。倍量倍速で仕事を通して成長できるツールの一つとして、社外副業や社内兼務で2つのポジションがある事が成長に繋がるのではないかという考えのもと、副業の解禁を行いました。

副業はバランスと周りの理解を得ることが重要

 副業解禁によって、オーバーワークによる過労や健康管理への支障が懸念として上げられていますが、条件として健康を害するような働き方は禁止としています。その部分以外でも、現在、副業解禁で社員からの不満や大きな問題はありません。個人の成長とともに、会社も成長するのは良いことですが、副業を解禁することによって、必ず会社に貢献してくださいということではありません。あくまで届け出制となっているので、ご自身でバランスを考え計画的に行って欲しいですね。

 ただし、副業解禁の中で気を付けて欲しいのは、周りの理解を得ることだと考えています。基本的には届け出制なので制限はありませんが、どうしても時間には限りがあるので、業務やプライベートに支障が出る可能性があります。それを前提として、自分の睡眠時間や家族との時間を大切にすることや職場から理解を得ることも重要と呼びかけています。

 限られた時間の中で、どのように予定を立てて副業や兼業を行うかは、配分等も含め日常生活に支障が出ないよう注意も必要ですね。私自身もキャリアコンサルタントとして大学で活動しています。時間短縮や合理的に物事を進めるということを心がけて、労働生産性を上げています。自身では可能な限り予定を立てるという工夫をしていますね。もちろん時間は限られているので、無理に詰め込みすぎない様にしています。ゆっくり落ち着いて考える、集中力を高めるのも重要な時間なので、逆にそういった時間も予定として組み込んでいます。

副業、兼業によって得た具体的な能力の向上

 実際、社外副業や社内兼務によって、どのように効率を良くするかという段取りやスケジューリング能力は上がりました。また社内兼務において現場でおきている出来事をすいあげながら、研修やプログラムを提案するのが私の役割だったのですが、現場発想の視点だけではなく、会社視点で物事を決めてどう進めていくか、という広い視点で物事を見て、そのはざまで何をどう提供するかを考えるようになりました。

 更に社外副業においてキャリア面談を担当する際は、学生の本音を引き出すことを心がけています。40万人の新卒者が就職活動をしていると言われており、人事担当者として、その姿の一部しか見ることが出来なくても、拡大推計しなくてはなりません。目の前にいる姿がその全てではないと思っています。弊社のことをどう見ているのか?どのような思いを持って弊社を希望したのか?など様々な角度から見ていかなければならないと考えています。

副業解禁後、社員は様々な場所で活躍

 弊社の副業解禁後の活動事例として、調剤薬局勤務、コンサルタントやコンサルティング業、放送作家などがあります。

 あくまで社員の一例を述べますと、大学講師、非常勤講師としてマーケティング講師をしている方がいます。情報共有や情報発信が早い学生と実際に接することによって、リサーチ力が養われたり、刺激になったりすることも多いということでした。この活動で、学生が弊社のマーケティング法に興味を持ち、新卒で今年と来年一人ずつ入社予定となっています。思わぬ副産物で、全く予測していない出来事でした。もちろん、選考基準を満たした方に限りますが、本当に弊社へ興味を持ち、熱意を持った社員が増えていくことはメリットとなりました。

 また、サービスグラントさんが行うプロボノ活動に実際に参画して、そこで、リアルな社会課題(例:フードロスや障害者や高齢者へのサポートなど)に対して提案したり、そのワークショップやフィールドワークを通して学ぶ活動を行っている方がいます。

 他にも、町おこしの一環として福山市の行政アクションを考えるローカルプランナーとして活動されている方や、デザイン会社を設立された方もいます。活動の幅は非常に広がっているといえますね。

 現在、仕事とプライベートの中で副業を理想的に行えているという意味で、社員から新たな要望は出ていません。ですが、今後要望があれば、働き方改革として週5日間勤務のうち、1日のみ兼業を認める動きも可能性として視野に入れています。

副業解禁は1人1人の成長推進のために

 副業解禁には様々なリスクはありますが、弊社では情報漏洩・倫理観を脱する行為・健康を害さない事、という3つの事柄を禁止としています。健康管理に関してはもちろん自己責任にはなりますが、計画と判断を任せています。

 また、確定申告や保険などのガイダンスは行っていますが、詳しくは経理担当に聞くようにアナウンスしています。

 副業が解禁となりましたが、特に全員に無理強いするものでもないですし、時間外でやりたい方がやる、ということを前提としています。もちろん副業をやめるというのも自由に選択できます。成長が見込めるのであれば、別の世界に目を向けるために、副業の解禁は良いものだと考えています。

ロート製薬株式会社
人事総務部 人事2グループ
蔵方 佑介

国家資格キャリアコンサルタント/大阪大学キャリアセンター/キャリアアドバイザー

(取材・写真・ライター 今西由季/校正 紺野さおり/編集 川越多江)