パラレルキャリアのすすめ[FILE03]

 パラレルキャリア、副業、兼業について、再び経済産業政策局産業人材政策室室長補佐の堀田さんと川浦さんにお話を伺ってきました。(今回は堀田さん)


 企業は副業を認めていないものの、個人は副業をしたいという場合もあります。その場合、学び直しや多様な経験という観点からは、必ずしも別の会社で収入を得て働くことだけではないと考えています。

 プロボノ活動ですとか、ボランティア活動など、収入を得ない形で経験を積むということも、副業が認められていない場合のステップとしてあるのかなと思います。

 こうした活動によっても、新しい価値観に触れる場にもなりますので、パラレルキャリアとして、まず、そういう形で始めてみるというのがあると思います。

 2019年3月に、経済産業省で「空飛ぶ車プロジェクト」という新規プロジェクトに参加してもらう副業ワーカーを募集しました。初めての試みですが、結果的に1338名の応募がありました。いろんなところで応募内容を見た、という声も聞かれました。ご応募いただいた方も、IT関係、コンサルティング関係、広告関係、など、様々な業種の方から問い合わせや応募がありました。反響は大きかったと思います。働き方としては、週に一回だけの官僚ということになります。

 経済産業省の中で、持っていないスキルを持った方々を受け入れ、オープンイノベーションを創出するという観点からやっていることです。このようなことを、企業がもっと積極的にやっていくと、社会にいろんなイノベーションが起きていくと思います。

 週一官僚の応募者は、今、自分が勤めている会社では得られない経験を会社の外で経験してくるということになり、また、経済産業省でまさに国を動かすことを経験してくることなので、副業として送り出した企業側にもメリットになるのではと思います。

 副業に対する企業のメリットについては、定量的なデータを示してメリットを理解してもらうことも大事ですが、経済産業省では、平成29年3月、「兼業・副業を通じた創業・新規事業創出に関する調査事業」を行い、兼業・副業を認める企業や、兼業・副業を行っている個人の事例を示しました。

 このように本業にもメリットがあって、個人の成長にも繋がっている、という事例を示し横展開を図ることも必要です。兼業・副業の促進には、特に、企業文化の改革というのが重要になると考えています。

 副業のデメリットとして企業側の声を聞いてみると「労務管理の負担があるのでやりません」という意見がありますが、一方で、副業に対して積極的な企業は「労務管理の負担があり、マネージャーのスキルも上がりますのでやります」という声もあります。このように、それぞれ見方の違いが出ており、副業に対するデメリットの捉え方も、まさに企業文化によって左右されるところもあるのではないかと思います。

 そういった中で、これからは多様な変化が訪れる時代になってきます。更なるテクノロジーの発達やグローバル化で、社会変化がどんどん激しくなっていく社会で、競争力を保ち続けるには、多様な人材の活躍が重要になってくるであろう、と思われます。当然、少子高齢化もありますし、量的な意味でも人材の確保が必要になってきます。

 元々、日本では「1社に専属する」という企業文化が強くて、一つの会社に忠誠を誓うことが美徳とされ、副業で他の会社では働いて欲しくないし、その時間や能力を自分の会社に100%注いで欲しいという考え方が強いです。しかし、これから多様な人材が必要になってくると、副業したいという人材もたくさんいるわけなので、そういった多様な人材が活躍できる人事制度も複数作らないといけない、というところがあるのではないかと思います。これからは、このような企業文化の変革が重要になってきています。誰がその変革をするのか、というと、やはり経営者層が率先して変えていくべきだと考えています。

 経済産業省では、そういった問題意識のもと九つの提言というのを出しています(下記参照)。この中でも今後、こういった多様な人材確保が必要になってくるので、例えば、副業などの就業形態やキャリア機会を提供していく、という提言もさせていただいています。そのためにも、企業文化の変革を実行していかなければなりません。


<経営競争力・人材競争力強化のための9つの提言>

3つの原則

  1. 経営戦略を実現する重要な要素として人材および人材戦略を位置付けること
  2. 個人の多様化・経営環境の不断な変化の中で個人と企業がお互いを選びあい、高め合う関係を構築していくこと
  3. 経営トップが率先してミッション・ビジョンの共有と実現を目指し、組織や企業文化の変革を進めること

6つの方策

  1. 変革や人材育成を担う経営リーダー、ミドルリーダーの計画的育成・支援
  2. 経営に必要な多様な人材確保を可能とする外部労働市場と連動した柔軟な報酬制度・キャリア機械の提供
  3. 個人の挑戦や成長を促進し、強みを活かした企業価値の創出に貢献する企業文化や評価の構築
  4. 個人の自律的なキャリア開発や学び直しを後押しし、支援する機械の提供
  5. 個のニーズに応え、経営競争力強化を実行する人事部門の構築
  6. 経営トップ自ら、人材および人材戦略に関して積極的に発信し、従業員・労働市場・資本市場との対話を実施

 大企業だけじゃなく、副業解禁をしにくい中小企業についても、都市の大企業人材を地方で副業させたりというマッチングの取り組みは、中小企業庁が行っております。社会的な意義として地方創生という効果もあります。

 こういった場合、都心にいながら地方で仕事をするのは大変なので、場合によってはテレワークなども使いながら兼業・副業をするとよいのではと考えています。

(次号に続く)