パラレルキャリアのすすめ [FILE02]

 前回に続き、パラレルキャリア、副業、兼業について、経済産業政策局産業人材政策室室長補佐の堀田さんと川浦さんにお話を伺ってきました。(今回は川浦さん)


 経済産業政策局産業人材政策室政策室は、雇用と教育で分かれていて、別アプローチになりますが、社会人基礎力を推進しているのが、教育チームになります。その中で、一つの方法として、基礎力を身につけるための方法として、副業・兼業・パラレルキャリアがあるのではないか、と言われています。

 副業・兼業・パラレルキャリアが注目され始めたのは、リンダ・グラットン教授が「ライフシフト」という本で書かれているように、企業の寿命が自分たちの寿命より短くなってきている現在、今まで通り新卒で入社した会社で勤め上げて定年で退職して余暇を過ごす、というキャリアの歩み方とは変わってきた、ということにあります。経産省においても同時期の2018年にこのような時代に求められる力として提唱させていただいたのが、「人生100年時代の社会人基礎力」です。

 ちなみに、「社会人基礎力」については、ニート問題など社会的課題としてとりあげられた2006年に提唱しました。その時は、彼らにどんな能力がつけば、もっと社会にスムーズに適応できるか、ということから、3つの要素(前に踏み出す力、チームで働く力、考え抜く力)からなる「社会人基礎力」を提唱しました。

 現在は、このような視点や能力は大学から社会人に向けたものだけではなく、どの世代でも当てはまるという観点から、この3つの視点を振り返りながら、きちんと身に着けることが重要ではないかと考え、「人生100年時代の社会人基礎力」を改めて提唱した経緯があります。

 これはあくまでビジョンですが、共通ワード化したことに意味があると思っています。どの企業でも、どの世代でも当てはまる、こういった能力や視点を、きちんと意識して身につけているか、そして、それを身につけていればキャリアオーナーシップを持ちながら人生100年時代を乗り切れるのではないか、というように考えています。

 では、どうやってこれを身につければいいのか、というのが問題となります(下記資料)。基礎力を意識すればいい、というわけではありません。

「個人の成長」と「企業の成長」について

キャリアオーナーシップをもつ個人は、主体性を向上させ、自らの「持ち札」を増やすことでキャリアを切りひらいていく。一方で、企業や組織は、効果的な人材確保を通じて多様な人材が活躍する場を提供するプラットフォームとなることではじめて成長し続けることが可能になる。

個人の成長と企業の成長のベクトルを合わせることにより、はじめて生産性の向上が実現可能に。これが「働き方改革第2章」で求められること。

 今までも、このような力を企業における研修や国内外の大学への留学など、様々な形で身に着ける機会はありました。また、これまでの日本では、OJTとか、ジョブディスクリプションが、あまり明確じゃないからこそ、ジョブローテーションがあり、そのジョブローテーションの中で自分で自主的に学んできてね、というのが通常だったんですが、その学ぶ速度も含め、企業からの研修プログラムそのものが、本当に今の時代にあっているのか、改めて見直す必要があります。

 OJTで学ぶことも重要ですが、職場とは異なる環境で学び直しをする、それを、また自分の企業に持ち返って、生かしていく、まさにパラレルキャリアだと思うんですが、そういった方法を通じて、「社会人基礎力」を身につけていく、というのも一つあるんじゃないか、と考えています。

 「社会人基礎力」の普及活動は、様々な企業や教育機関の方々と、ディスカッションしながら行っています。企業に入ってからも、20代だけじゃなく、30代、40代も必要な能力だと思っていますし、かつ、専門性が身についてきた後に、自分の強み、弱みがわかり、何が足りなくて、何を補足するために、副業・兼業・パラレルキャリアをするのか、ということに繋がりやすいと思います。

 普及活動は様々な企業や教育機関に対して行っています。その結果、最近は企業だけでなく学生の意識もかなり変わってきており、とある調査によると、ずっと同じ会社に勤めたいという人の割合が、昔よりかなり減ってきました。

 ということは、自分なりの力を身につけて、かつ、業界のスキルを身につけて、パラレルキャリアを歩んでいきたいという志望者も、かなり増えているということです。

 大学生については、昔よりも選択肢がかなりあり、学業に従事することが大前提ではありますが、学業プラス様々なところで活躍できる機会があります。NPO、ボランティア、アルバイト、サークル、いろいろある中で、積極的に手をあげる学生が増えたということをいろんな大学の先生から聞いています。

 キャンパスで勉強するだけではなく、それ以外の活躍の場を広げるために様々な経験をすることにより、自分のキャリアはこれ一本だけじゃないんだな、入社してずっとここにいないといけないわけではないんだな、という感覚が養われるのではないか、という印象があります。

(次回 ファイル3につづく)