株式会社 新生銀行

新生銀行グループ本社のグループ人事部、天明純一さんに、パラレルキャリア応援について詳しくお話をお伺いしてきました。


 当行では、ちょうど一年前の2018年4月から、副業・兼業を制度として解禁しました。当行には、外国人や中途の方も多く、昔からダイバーシティの状況にありました。色々な価値観や考え方を持っている多様な人材の中で、あらゆることに対して、もともとおおらかな文化がありました。

 そのような中、働き方改革に関する政府の取り組みや報道等が多く出るようになり、「当行も副業・兼業を制度として整備できないだろうか」と社長から話があったことがきっかけで、2017年12月頃から解禁に向けて動き出しました。

 現在、副業・兼業を申請しているのは、全体で約40名です。男女比はだいたい半々で、年齢層は、特定の世代に偏ることなく満遍なくいます。他の会社に勤めることについても、勤務時間に制限はありますが、一定の条件を満たす社員については認めています。

 副業・兼業制度を導入するにあたり、してはいけないことなどの縛りをかけたくなりますが、縛りすぎるとせっかく制度を作ったのに使い勝手が悪く、広がらないのでは、という考えもありましたので、最低限のルールにして、さまざまな形で副業・兼業に取り組めるような仕組みにしました。

 副業・兼業申請は、所属部店の部店長と人事部との合議制で承認されます。その際には、申請書の提出が必要になりますが、事細かな記載は求めていません。どこで何をやるか、どのくらいの時間なのか、という簡単に記入できるものを提出してもらい、基本的には承認しています。

 仕事内容についても、反社会的なことや、同業他社(他の銀行での兼業)はもちろんいけませんが、基本的には、あれもこれもダメではなく、趣味の延長と言えるものから、コンサルティングなど、仕事に関連していそうなことまで多業種に及んでいるものを承認しています。

 例えば、金融知識を活かして、アドバイザーやセミナーの講師をすることなども構いませんし、専門雑誌の執筆など、当然仕事関連の副業・兼業をしている人もいます。

 対象者については、勤続年数での縛りはなく新卒、有期雇用、パートの方など、すべて対象としています。

 副業・兼業解禁に先立って、社員に啓蒙活動や周知を図ったわけではありませんでしたが、解禁後の反応は決して悪いものではなく、前向きに捉えていただけたものと思います。

 当行では、副業・兼業解禁の他にも働き方改革として実施している施策があります。早いものですと、兼業がはじまる1年前から「早帰り推進策」として働くべき時は、しっかり働き、それ以外の時間は自由な時間をとりましょう、ということを進めてきました。

 情報漏洩のリスクは、一般的に懸念されていますが、副業・兼業をしたから情報漏洩をしてしまうとは思っていません。特に金融機関は、個人情報や大切なお客様の情報を取り扱うコンプライアンス的に厳しい業界なので、従業員は情報の取り扱いについてしっかり教育されており、そもそも情報漏洩しないことが一人ひとりに要請されています。

 副業・兼業に対する考え方も、雇用契約というか、就業時間においては、会社が労使においてしっかり把握するべきところ、という考えですが、それ以外の時間に関しては、どういう風に使おうが、基本的には個人の自由、というところがもともと副業・兼業を取り入れた背景になります。

 副業・兼業解禁による人材の流出も、今のところありません。副業・兼業に関係なく、そもそも銀行で離職していく人を抑えようという方が大切だと考えています。金融業界としても、人材の流出が止まらない中で、より社員が求めることに対応していくことが離職の防止につながるという考えです。

 副業・兼業解禁後のトラブルやクレームも、今のところありません。兼業している社員が、本業でパフォーマンスを落としてしまったという事例もありません。柔軟なルールにしつつ、(ルールの範囲内で)やりたいことをやってください、という特色を強めた結果かもしれません。今後も、そのような状況が続くのではないかと思っています。

 副業・兼業解禁により、本業である銀行のパフォーマンスが上がったかというと、なかなか目に見えにくいところで、今のところ目立った変化はありません。一方、副業・兼業する社員のモチベーションアップとして、本業も副業・兼業も充実させて、自らパフォーマンスを上げていくということにはつながっているはずです。

 当行としても、さまざまなメディアに取り上げていただいて、実際に副業・兼業をやっている社員のインタビューを世の中に発信していくことで、他の企業や銀行にも仕組みを共有できますし、さらには、銀行としてのブランディングや、採用活動、社員の士気向上にもつながっていると実感しています。

 一般的には「副業・兼業をやろう」というと、マイナスイメージが多く、保守的な考えを持つ方も一部いらっしゃいます。本業が疎かになるのではないか、情報が漏れるのではないか、など、足踏みをしてしまう会社もあると思いますが、当行で1年間やってみて、実際に特に困ったことは起きていません。むしろ日頃のモチベーションにはプラスに働いていると思います。

 今後、副業・兼業解禁を検討する企業が増えるほど、国の法律や制度なども見直され、より柔軟な副業・兼業が出来るような良い方向になりますし、兼業・副業制度は各社の社員の意識改革につながる良い取組みですので、ぜひ広がっていけばよいと考えます。

株式会社新生銀行 グループ本社
グループ人事部
天明 純一